昨年あたりから生誕100年記念で数多くの書籍が創刊されていた.生ける構造主義者レヴィ=ストロースがこれまでに私達へ残してくれた業績は計り知れないだろう.
「文明人」と「未開人」
今でこそ差別的な言葉である「未開人」,そして,その対立項「文明人」.しかしながら,かつて西洋思想が謳歌した時代には,まことしやかに「文明人」と「未開人」は広く一般に受け入れられていた考え方である.
その無知・矛盾に,一石を投じたのがクロード・レヴィ=ストロースによる文化人類学と記号論的見地からの批判であった.
その理路を端的にいえば,「文明人」も「未開人」にもある普遍的な構造(これは文化や慣習,思考過程にいたるまで)があると主張した.つまり,それまでの西洋的な思想として,「西洋」は秩序立っているが,「東洋」は理解しがたい野蛮とも思われる慣習などの無秩序さがあるとしていたのだ.しかし,記号論を援用しながら,少数民族の「神話」を素材に構造を抽出できるというアプローチをレヴィ=ストロースは生み出したのだ.これは当時センセーショナルなことであったに違いない.声高に西洋主義的思想を語っていた輩を黙らせたのだから.
こんにち,私たちが思っている以上にかつての人間はひどく偏見的な見方(西洋主義的)をしていたのだ.それも,つい最近まで.その幻想を,レヴィ=ストロースが覚まさせたといってよいだろう.
彼の主張にいくらかの批判はあるが,少なくとも私たちにレヴィストロースが教えてくれるのは"謙虚さ”ではないだろうか.
なぜなら,レヴィ=ストロースが言うように,
世界は人類で始まった、そして人類なしで終わるであろう。
La pensée sauvage (1962)『野生の思考』みすず書房
その通りだ.
そして,この意味は実に深い.
多大な功績を残してくれた今無きレヴィ=ストロースは,これからも生き続けるのだ.
以下,主な著書
- Tristes tropiques (1955)
- Anthropologie structurale (1958)
- 『構造人類学』みすず書房
- La pensée sauvage (1962)
- 『野生の思考』みすず書房
- Les mythologiques (1964 - 71)
- 『神話論理』みすず書房 全5巻予定
- Le regard éloigné (1983)
- 『はるかなる視線』みすず書房
- La potière jalouse (1985)
- 『やきもち焼きの土器作り』みすず書房
- De près et de loin (1988)
- 『遠近の回想』(ディディエ・エリボンとの共著)みすず書房
- Saudades do Brasil (1994)
- 『ブラジルへの郷愁』 みすず書房 写真が主
- Saudades de São Paulo (1996)
- 『サンパウロへのサウダージ』 みすず書房 写真が主
ケロ
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