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2009年10月11日日曜日

地域再生の条件




■格差は作られた

地域の少子高齢化や過疎化,若年層の雇用という問題背景は,どの地方復権本でも共通項のようだ.

本書のイントロもそれに違わぬ問題提起から始まっている.

著者が一貫して主張していることは,「政府によるトップダウン式の計画的政策が都市と地域の格差を生みだした」ということだ.

たちの悪いのが,政府は地方分権/地方再生を掲げた政策をとりながらも結果として地方と都市の格差が生みだされてしまうという倒錯した帰結となることだ.


象徴的なプロジェクトとして取り上げているのが,1962年からスタートした「国土計画」です.国が描いたグランドデザインは必ずしも成功するということはない.画一的かつ上っ面の目的をもったプロジェクトにすぎないことが少なくないのだ.

著者は国土計画について以下のような批判を述べている.

列島中の自然と社会資源と人々の生活を改変し,地方に国へのぶら下がり体質と土木国家的体質を植え付けてしまったことでも,この国土計画の地方に対する罪状はかなり大きいといえます.


この他にも地方をダメにした元凶を指摘している.第一次産業制作の誤謬に次ぐ誤謬がそれだ.以下,簡単に記す.

・森林の軽視
・コメ偏重の農政
・沿岸における乱獲

これらの結果,食糧自給率の著しい低下と第一次産業従事者の激減が挙げられる.

やはり,本書の実例を参照すれば,これまでの国のトップダウン式による計画や構想では,本質的な地域開発,つまり住民の生活を真に豊かなものにすることにはつながらないことがわかってきた.

■人権が保障された地域をつくる-ノーマライゼーションの地域再生

著者は,拠って立つべき地域再生の抜本的な目的は,人権の保障にあると述べている.

そこでノーマライゼーションという考え方が重要になってくる.高齢者も子供も,男性も女性も,障害者も健常者も,ともに安全で安心な生活を享受できる社会こそ,広義的な意味でノーマライゼーションを実現したといえるだろう.

たまたま,TVで取り上げられていたノーマライゼーションを標榜するむらがあった.
長野県の南部にある泰阜村だ.以下,HP記載の記事です.

医療、保健、福祉の連携は不可欠と言われますが、泰阜村の福祉には福祉の中に医療、保健が入る感覚が大切ではないか


そして、診療所のメンバーを中心として在宅福祉への取り組みが始まりました。

★ 理念にもとづく三原則

  • ノーマライゼ-ション

  • 自己決定

  • 社会参加


このように,現実と今後の避けられない未来を見据えた取り組みを泰阜村は国主導ではなく,自治体,住民による自己決定によってノーマライゼーションを実現する施策に取り組んでいる稀有な例だ.


■地場産業で生活できる地域をつくる

いくつかの実例を出しながら,重要な点をピックアップすると以下のものが挙げられる.
・「トン」農業から「グラム」農業へ,少量多品目栽培の農業を確立する
→これはロングテール効果を狙った商品作りだろう.個性的な商品作りに欠かせない考え方だ.

・第一次産業を生かすことが過疎脱却の必須条件
→これによって,「食べていける」地域へとつながっていく

■地域の自律と自立

ここまで話してきて,これが大事であることは自明だ.
地方分権のもと地域が自律と自立を果たすには,住民参加が必須の条件である
と著者は強調している.こうも述べている.
地域再生に必要な条件とは,ムラ的地域構造ではなく,市民の人権,参加,連帯,構成といった民主主義の原則を踏まえたネットワークである


簡単に言ってしまえば,ハード面ではなくソフト面を重視した地域づくりへと転換しているということだ.

■最後に

協働をキーワードに自治体と地域住民が新しい関係でともに地域再生への道を築いていくことが重要だ.それぞれの持ち分を把握し,相互補完的な関係を構築していければ,新しい地域づくりの足掛かりになるだろう.最後に,著者が強調していることとして,やはり,国任せではうまくいかないという現状を十分に理解する必要がある.そして,そんな国にぶら下がってばかりいてはいけないという自覚をもち,自律/自立した地域づくりへの参画がいま市民に期待されているといえる.

ケロ.

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