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2009年10月9日金曜日

農山村再生


北海道夕張市の財政破綻が心のどこかに引っかかっていた.

いま農業に対する関心,そして地方に対する関心が高まっている.農業に対する関心は,言い換えれば,食糧に対する関心ともいえる.食糧自給率が低いのだから底上げしようという政府のプロパガンダのもと若者を中心に農業に興味・関心を持つ人が増えているようだ.これがまた,ビジネスとして不活性気味であった農業と相まって,双方向間でマッチングできていることはいいのかもしれない.


農山村再生」の著者である小田切徳美さんは地方=農山村の問題点としてまず挙げているのが,空洞化である.それは以下のような現象のことである.

■ 中山間地域で進む三つの空洞化

つまり,多面的な問題を抱えていることといえる.三つの空洞化とは「人」「土地」「むら」というように分けられている.それぞれの空洞化が進行しているようだ.

1.人の空洞化-社会減少から自然減少へ

これまでの社会などで学んだ内容では,地方から都市部へ人がシフトするものというのが大まかな理解だった.しかし,今日でいうところの“人の空洞化”とは,社会的なものよりも自然的な要因が強く影響しているようだ.自然的とは,つまり,地方の人口減少は「出生者数よりも死亡者数が多い」に一因している.


2.土地の空洞化-農林地の荒廃


農林業的土地利用の空洞化も,上述の人の空洞化同様に80年代中頃から顕著である.山村部では耕作放棄地の増加が懸念されている.

3.むらの空洞化-集落機能の脆弱化

集落機能の後退は早々には気づきにくい静けさで忍び寄ってくる.“人の空洞化”の先に,“むらの空洞化”の発生があるのは間違いない.そして,その延長線上に待ち構えているのが“限界集落”というものだ.

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*総務省自治行政局過疎対策室作成(平成19年9月21日)による「過疎地域の現況」より引用

■深層で進む「誇りの空洞化」

著者は3つの空洞化のみならず,第4の空洞化として「誇りの空洞化」を挙げている.抽象度の高い表現である.言い換えれば,地域住民がそこに住見続ける意志や意味が含まれる土着性を指すのだろう.必ずしも,所得格差だけでは説明できない理由がここにあるのかもしれない.

■農山村再生の実践

「いま,もっとも求められているのは,第一次産業や生業を大切にしながら新たな仕事に結びつけ,いのちと暮らしを守り,柔軟な感覚で魅力を発信している地域に学び,その共通項を見出して普遍化していくことだろう」


大江正章.,2008.「地域の力」岩波書店

相対的に都市に対して地方が見劣りしているという劣等感を払拭すべきである.地方には「何も無い」という認識を捨てるべきである.ここから始まるのだ.つまり,「誇りの空洞化」を埋めるための「誇りの再建」を計ることが重要だといえる.

著者が要約した「農山村の再生策」は
1.暮らしの視点から,
2.再生の立体的な組み立てを,
3.「地域の力」の中から析出することが強く要請されているのである.


■新たな農山村コミュニティの事例-川根振興協議会

広島県旧高宮町(現安芸高田氏)の川根振興協議会はここ数年,地域づくりのための新しいコミュニティ組織の全国的なモデルとして取り挙げられている.


簡単にまとめると,以下の点での工夫がなされている.

地域で支えようとする地域住民による「買い支え」意識
→振興会運営による山村コンビニやガソリンスタンドによる

コミュニティの範疇
→コミュニティの運営は,手触り感・ぬくもり感のある相手の顔が見える範囲で行われている

できることからコツコツと
→地に足をつけた範囲から徐々に活動範囲を広げる.そして,そこから徐々に自信と誇り.生き甲斐を実感していく.最終的には,広範な活動へと広げていく「無理のない総合性」を発揮している.

自治組織と営利組織の二面性
→都市と農村の交流の拠点.地域の雇用や付加価値の確保.住民の生活向上といった点で経済活動の有効性は見逃せない

コミュニティの革新性
→集落とは異なるアプローチが地域再生において不可欠である.従来の集落とは差別化した活動を行うことが重要であることから,若者や女性の積極的な参加の促進が革新性をうむ.


■新しい産業創出のキーポイント


公共事業に依存しない産業の育成があらためて喫緊の課題である


全国的な取り組みの事例から「4つの経済」の構築・確立としてまとめるられるようだ.

1.地域資源保全型経済
→その地域固有の地域資源,つまり自然をうまく引き出し,利用することが不可欠である.またECにより,ロングテール効果を狙った個性的な商品作りも畢竟,地域資源あってのことである

2.第六産業型経済
→農林水産物の生産(一次産業)だけでなく,加工(二次産業)と販売(三次産業)を一連で手掛ける第六産業型経済(1×2×3次産業=6次産業)
究極的な第六次産業は,農家レストランといえるかもしれない.

3.交流産業型経済

→地域資源保全型経済の発展型として交流産業型経済が挙げられる.エコツーリズムや学びを目的とした博物館など,従来の慣行とは違った視点で交流産業を創出するべきである.

4.小さな経済
→わずかでありながら,所得の拡大をはかる経済活動が重要である.その効果が結果として,雇用と若者の就業へとつながっていく.

■まとめ
必ずしもこれまでに上げてきた対策・工夫が不可欠とは言えないが,明確なビジョンを住民と共有し,足並みをそろえた取り組みが重要なのではないか.小さいながらも最大数の最大幸福をむら・まちスケールでこそ実現化できるかもしれない.

ケロ.

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