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2009年10月25日日曜日

おくりびと(2008)★★★★☆

おくりびと(2008)
ふと,ひぃおばあちゃんの死を思い出した.

それは僕が小学生になる前だった.

昨日まで床で寝ていたひぃおばあちゃんは,朝になるとぴくりとも動かなくなっていた.それに周りが気付き,うちの母がひぃおばあちゃんの口の中へ箸を突っこんだ.その映像を僕は今でも鮮明に思い出せる.しかし,それがなんのための作業なのか当時の僕には全く分からなかったのだ.その後,母親はその作業を終え,なにか納得したかのように,おいおい泣いた.それを遠目に見ていた僕は「あぁ,死んだのか」とひぃおばあちゃんの死を漠然と理解した.

それが僕にとって,最初であり最後の身近な「死」となっている.

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国内外で評価を得ている「おくりびと」.「おくりびと」@Wikipediaに詳しいが,本木雅弘さんは本作の映画化には随分苦労されたようだ.「納棺夫日記」の著者・青木新門さんに何度も映画化を懇願したようだが,結局原作オリジナルというわけにはいかず,「おくりびと」という新しい脚本での映画化となったようだ.


観ていて大変よかったのが,映画のような映画だったことだ.つまり,ドキュメンタリーのようなシリアス風でもなく,死を真正面から見つめたというわけでもなく.時にコミカルに,時に真面目に,多様な「死」の在り方を用意してくれている.死生観を問う内容であることはわかるので,「どんな内容かな」と構えていたところに,のっけから出鼻をくじかれた.故人をおくる「納棺の儀」で,冒頭からの笑いを誘うポイントが効果的に鑑賞者を安心させる.シナリオが,うまい.

納棺の儀(左:山崎努演じる生栄,右:本木雅弘演じる大悟)


しかし,考えてみれば「死」を神聖であり,かつ触れてはいけないタブーのような扱いそのものの是正を問うのが本作「おくりびと」の一つの命題にもなっていよう.故人をどのようにおくるのかは,それぞれの生き方が様々であったように,死の在り方も多様である.現代人が遠ざけている死を,乱暴に言えば,もっと敷居を低くして,身近なものとするアプローチがみられた(それが前述した可笑しさを盛り込んだ方法).


また,おくりびと(=納棺士)と呼ばれるように,これまで知ることがなかったニッチ市場も本作で紹介される機会になった.いくらか納棺士というものが,これまで差別的な扱いを受けていたことを思えば,それを払しょくするためにも良い結果となった.

映画の出演者も好印象.モックン(大悟)の生真面目さからでてくる可笑しさ,そして,社長である山崎努さんの存在感は重要だ.その存在は,大悟を納棺士へ目覚めさせる役割とともにひとつの生死観を教え与えてくれるなど,言ってみれば,大悟にとってメンター(指導者・導き手)のような役割も果たしていた.あと,忘れてはいけないのが大悟の妻・美香を演じる広末涼子さん.webデザイナーという職種も現代的で,納棺士と対極に置いた点がおもしろい.夫に尽くす奥ゆかしさと,広末さんのもつ「清潔なエロさ」,これがよかったw





観て損はない
シリアス ★★★☆☆
感動  ★★★★☆
コミカル★★★☆☆
全体  ★★★★☆


ケロ

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