“ぐるりのこと。”
― 自分の身の周りのこと.または,自分をとりまく様々な環境のこと.
困難に直面した夫婦の10年間の軌跡を,本作は140分もの時間で描く.
10年? 140分も?長すぎやしないか?そんな思いになる.
しかし,それは必要だった.夫婦の10年間という長いスパンを追うことに意味があり,140分もの時間を使ってこの物語を紡ぐことが同じように必要だった.
前作「ハッシュ!」で高い評価を得ている橋口亮輔監督の6年ぶりの映画は,自身の経験も織り交ぜた渾身の一作.
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人はよく偏った考えを持つ.いつもベストの状態で互いが一緒に居れることを前提に未来を描きがちだ.お互いが常に健康で,仕事も順調,申し分ない順風満帆の生活を送れると思うものです.
しかし,そうはいかないのが現実だ.そんな時,離れずにとなりの愛する人とはたして一緒にいれるだろうか?怪我をした,重病を患った,多大な借金を抱えてしまった相手だと したら・・・.これは,自分にとって煩わしい事態だ.そんな自分の人生や夢,キャリアに支障をきたすような事態になった場合,愛した人と離れることを頭の片隅でふと考 えたりはしないだろうか?
僕たちは困難に直面した時,待ち望むように特効薬を,即急な解決策を求める.しかし,それはなかなか難しい.
10年間という長い月日の中,不器用ながらに二人は模索していく.
生まれたばかりの子供を失い,うつ病に悩む妻・翔子を夫・カナオは,見守るように,一緒 にいた.妻を問いただすわけもなく,ただ寄り添うように一緒にいただけだ.しかし,不思議とカナオには彼女を受け止めるような雰囲気があった.ささやかな 日常を積み重ね,次第に夫婦は取り戻していく.
愛すること・幸せであることが,時間のなかにあるとしたら.互いが同じ時間の中に「一緒にいる」ということが大切なことであるとしたら.
そんなことを必死に,カナオは体現するかのようだった.
本作の主演は,リリー・フランキーさんと木村多江さんの二人.
リリーさんが本当に素晴らしい.これはリリーさんのドキュメンタリーを描いた映画のようだ.90年代という激動の時代を背景に,“失われたもの”を取り戻していく二人をぜひ見守ってほしい.
めんどくさいけど,いとおしい.
いろいろあるけど,一緒にいたい.
隣の人を愛するならばぜひみてほしい・・・,で.
愛しさ ★★★★☆
切なさ ★★★☆☆
心強さ★★★☆☆
全体 ★★★★☆
ぐるりのこと。予告編
ケロ
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