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2010年5月22日土曜日

僕は僕に沈黙する~「ゲーデルの哲学」(高橋昌一郎)






「ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在論」 (高橋昌一郎)


つい先日,高橋昌一郎さんが著した「理性の限界」を一読し,深い感銘を受けた.「理性の限界」以前に出された本書は,ゲーデルの不完全性定理に特化した本であるだけでなく,ゲーデルの生涯を追いながら,その人となりや豪華な交友関係を補助線に,彼の研究の重要性をも明らかとしている.

とにかく難しい学問部類の論理学や数学,哲学等を著者の平易かつアナロジーをもちいた理解しやすい論理構成の文章によって,大変リーダブルな本に仕上がっている.この功績は大きなものであるに違いない.なぜなら,これらの内容はもっと多くの人が知って然るべきものであるからだ.それを,より(理解とまではいかないまでも)知ってもらうために敢えて敷居を低くして,僕のような人間でもナントナクわかるように思考を凝らせて工夫されていることにひどく感激した.




あまり内容には触れないがゲーデルの残した素晴らしい成果である論理学の完全性定理や自然数論の不完全性定理を踏まえて,彼のの世界に対する解釈を端的にあらわした「哲学的見解」を以下に記す.

1. 世界は合理的である.
2. 人間の理性は,原則的に,(あるテクニックを介して)より高度に進歩する.
3. すべての(芸術等も含めた)問題に答えを見出すために,形式的な方法がある.
4. [人間と]異なり,より高度な理性的存在と,他の世界がある.
5. 人間世界は,人間が過去に生き,未来にも生きるであろう唯一の世界ではない.
6. 現在知られているよりも,比較にならない多くの知識が,ア・プリオリに存在する.
7. ルネサンス以降の人類の知的発展は,完全に理性的なものである.
8. 人類の理性は,あらゆる方向へと発展する.
9. 正義は,真の科学によって構成される.
10. 唯物論は,偽である.
11. より高度な存在は,他者と,言語ではなく,アナロジーによって結びつく.
12. 概念は,客観的実在である.
13. 科学的(厳密な学としての)哲学と神学がある.これらの学問は,最も高度な抽象化概念を扱う.これらが,科学において,最も有益な研究である.
14. 既成宗教の大部分は,悪である.しかし,宗教そのものは,悪ではない.
pp. 201-202
僕たちの認識する世界=システムを超えて,他の世界がある.これは避けようのない存在である.従って,僕らが語りつくせる事物は決してないのだ.

哲学者・ウィトゲンシュタインの有名な言葉を借りれば,

およそ語られうることは明確に語られうる。そして、論じえないことについては、人は沈黙せねばならない

故に,僕は「僕」に沈黙してしまう.




ケロ

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